あおり運転と危険運転の厳罰化とは?典型例や罰則について解説

令和2年7月2日、改正自動車運転死傷処罰法(正式名称、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)が施行され、あおり運転を行った結果、人に怪我を負わせたり、死亡させた場合には危険運転に関する規定を適用すことが可能となりました。

そこで、本記事では、

 

・法改正でどう変わったのか

・具体的にどういうケースで適用されるのか

・罰則はどうなのか

 

について法律ライターが詳しく解説してまいります。

法改正でどう変わった?

改正前の自動車運転死傷処罰法2条には次の6つの行為を「危険運転」とし、その危険運転によって人を負傷させた場合には「15年以下の懲役」、人を死亡させた場合には「1年以上の有期懲役(上限20年)」に処するとされていました。

 

1号・・・・アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為

2号・・・・自動車の進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為

3号・・・・自動車の進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為

4号・・・・人又は車の通行を妨害する目的で、

①走行中の自動車の直前に進入して自動車を運転する行為

②通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

5号・・・・赤信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

6号・・・・通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

 

ところが、改正により、次の赤太文字の行為が5号と6号に追加され、全部で8つの行為が「危険運転」とされたのです。

 

1号~4号 (前同)(略)

5号・・・・車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止    し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為

6号・・・・高速自動車国道又は自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為

7号・・・・赤信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

8号・・・・通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

 

5号、6号にあたる行為がいわゆる「あおり運転」と呼ばれており、この「あおり運転」が従来から規定されていた危険運転致死傷罪の行為類型として位置づけられたことで、あおり運転により人を死傷させた場合に危険運転致死傷罪が適用できるようになったというわけです。

あおり運転で「5号」が適用される典型例

5号は6号とは異なり、被害車両を停止させること、又は徐行させることが要件とされていません。したがって、被害車両の通行を妨害する目的で

 

被害車両の前方で停止するなどしたところ、自車の後方に被害車両を追突させた

 

という事故が、5号が適用される典型例といえます。

【5号が適用される典型例】

5号では、被害車両が事故直前、「重大な交通の危険が生じることとなる速度」で走行していたことが要件とされています。ここで「重大な交通の危険が生じることとなる速度」とは具体的に何キロからのことをいうのかが気になります。この点、7号、8号にも同様の要件が規定されているところ、7号の事案で、

 

時速約20キロ

 

が「重大な交通の危険が生じることとなる速度」に当たると判示した判例(最高裁平成18年3月14日)がありますが、結局は、被害車両の大きさ、重量、道路状況など個別の状況に即して判断されるものと考えられます。

なお、追突は本来、後続車の落ち度が原因で発生することが多いです。したがって、後続車の運転手に脇見等の落ち度があり、その落ち度がなければ追突を回避できたという事情が認められる場合には、5号は適用されないものと考えられます。

あおり運転で「6号」が適用される典型例

6号は5号とは反対に、被害車両を停止又は徐行(時速10キロ程度が目安)させたことが要件とされています。したがって、被害車両の通行を妨害する目的で

 

被害車両の前方で停止するなどし、被害車両を停止又は徐行させたところ、被害車両が第三者の運転する車に追突された

 

という事故が、6号が適用される典型例です。

【6号が適用される典型例】

ここで注目すべきは、

 

あおり運転をした加害者は自らの運転ではなく、第三者の運転によって生じた被害者の怪我、あるいは死亡につき責任を負う

 

という点です。

そのため、6号は、こうした事故が起こる危険度が類型的に高い、

 

高速自動車国道(いわゆる高速)又は自動車専用道路で起きた事故に限って適用される

 

としたものと考えられ、この点も5号と大きく異なる点となります。

あおり運転が危険運転となった場合の罰則は?

5号、6号にあたるあおり運転をした結果、

 

人を負傷させた場合・・・・15年以下の懲役

人を死亡させた場合・・・・1年以上の有期懲役(上限は懲役20年)

 

です。

実際の量刑(懲役●年になるのか、執行猶予が付くのか実刑になるのか)は、あおり運転をした経緯・動機、あおり運転の実際の状況、被害者の数、被害の程度(死亡か負傷か、重傷か軽傷かなど)、被害者・遺族の処罰感情、示談の有無、被告人の前科、前歴(特に交通違反歴)の有無などによって異なってくるでしょう。

なお、あおり運転によって人を負傷させる、死亡させるという結果が発生しなかった場合でも、道路交通法に規定されている「妨害運転罪」に問われる可能性があります。

妨害運転罪についてはこちらの記事もご参照ください。

↓↓

https://law-writer-pro.com/dourokoutuuhou-aoriunten/

まとめ

令和2年7月2日から施行された改正自動車運転死傷処罰法によって、あおり運転を行ったことにより、人を負傷させる、人を死亡させる結果を発生させた場合には危険運転という重たい罪に問えるようになりました。罰則は、負傷の場合「15年以下の懲役」、死亡の場合「1年以上の有期懲役」です。

あおり運転については社会的に厳しい目が向けられていますから、仮に、起訴され刑事裁判で有罪となった場合、重たい量刑を科せれるおそれもあります。その点を心に留めていただいた上で、注意して運転する必要があります。

以上

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