あおり運転とは?車間距離?で自転車の運転者が逮捕【元検察官解説】

本日、自転車のあおり運転で初めての逮捕、というニュースが流れました。

このニュースを見た方の中には、自転車にもあおり運転の罪が適用されるの?と疑問に感じた方も多いのではないでしょうか?

そこで、本記事では、あおり運転の罪の内容どういう考えのもとに自転車にもあおり運転の罪が適用されるか、などについて元検察官の私が詳しく解説してまいります。

 

 

あおり運転の罪とは?

あおり運転の罪とは、道路交通法第117条の2第6号、同法第117条の2の2第11号に規定された罪で、正式には「妨害運転罪」といいます。

あおり運転の罪は、近年改正された道路交通法に新たに設けられた罪で、改正道路交通法は令和2年6月30日から施行されています。

したがって、同日以降に行ったあおり運転に対しては、上記のいずれかの規定が適用される可能性がありますので注意が必要です。

なお、道路交通法「第117条の2第6号」は、高速自動車国道(高速道路)、自動車専用道路におけるあおり運転罪に関する規定ですから、以下では「第117条の2の2第11号」について解説します。

道路交通法第117条の2の2第10号の規定は以下のとおりとなっています。

 

 

道路交通法

第百十七条の二の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

一~十 (略)

十一 他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であって、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者

イ 第十七条(通行区分)第四項の規定の違反となるような行為

ロ 第二十四条(急ブレーキの禁止)の規定に違反する行為

ハ 第二十六条(車間距離の保持)の規定の違反となるような行為

ニ 第二十六条の二(進路の変更の禁止)第二項の規定の違反となるような行為

ホ 第二十八条(追越しの方法)第一項又は第四項の規定の違反となるような行為

ヘ 第五十二条(車両等の灯火)第二項の規定に違反する行為

ト 第五十四条(警音器の使用等)第二項の規定に違反する行為

チ 第七十条(安全運転の義務)の規定に違反する行為

リ 第七十五条の四(最低速度)の規定の違反となるような行為

ヌ 第七十五条の八(停車及び駐車の禁止)第一項の規定の違反となるような行為

 

つまり、

 

【あおり運転の罪の成立要件】

  • 他の車両等の通行を妨害する目的
  • イ~ヌの行為
  • 当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法

 

という要件がそろうとあおり運転の罪が適用されてしまう可能性があるということになります。

 

なお、「他の車両等の通行を妨害する目的」があったかどうかは、本人の意図はもちろん、あおり運転の態様、道路状況などの客観的状況から判断されます。

また、「道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法」の「道路における交通の危険」とは、道路における交通事故をはじめとする事故が発生する可能性、という意味です。もっとも「おそれ」とあることから、この可能性がは「起きるかもしれない」という抽象的な可能性(危険)でよいと考えられます。通常、イ~ヌの行為を行えば、同時に、「道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法」と認められてしまうことが多いでしょう。

 

あおり運転の罪は自転車にも適用される

今回の「ひょっとこ男」さんがどんな行為を行ったのかは明らかではありません。

そこで、以下では、「車間距離の不保持」を行ったと仮定して解説してまいります

車間距離の不保持については、前記の「ハ」のとおり、道路交通法第26条に規定されています。

 

道路交通法

(車間距離の保持)

第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

 

なお、これまで「車両等」と何度も出てきましたが、この車両等とは「車両」と「路面電車」のことをいい(道路交通法2条17号)、「車両」には自動車のほか原動機付自転車、「軽車両」、トロリーバスを含みます(同条8号)。そして、この「軽車両」が、実は自転車のことを指しているのです(同条11号)。

 

つまり、今回の「ひょっとこ男」さんの事件は

 

① 車両等に自転車も含まれる

② 自転車も車間距離の保持義務がある(道路交通法26条)にもかかわらず、「ひょっとこ男」さんはこの義務に違反した

③ あおり運転の罪の「ハ」の要件を満たす

④ あおり運転の罪の「他の車両等の通行を妨害する目的」、「道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法」の要件も満たす

⑤ あおり運転の罪の疑い

 

という流れの考えで逮捕されたものと考えられます。

 

他方で、前記のイ~ヌの中には、自転車に適用されない規定も存在します

たとえば、「ト」の警音器の使用制限に関する規定は自転車には適用されません。

 

(警音器の使用等)

第五十四条

1 車両等(自転車以外の軽車両を除く。以下この条において同じ。)の運転者は、次の各号に掲げる場合においては、警音器を鳴らさなければならない。

一、二(略)

 車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。

※ 1項で、「車両等」には自転車は除く、とされています

 

以上、あおり運転の罪の規定には適用されない規定はあるものの、今回の「ひょっとこ男」さんの事件のように、自転車に適用される規定もあるということはぜひ知っていただきたいと思います。

 

あおり運転の罪の罰則、違反点数

あおり運転の罪(道路交通法第117条の2の2第11号違反)の罰則は

 

3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

 

です。

違反点数は25点です。これは、検挙されると一発で免許取消し(欠格期間2年間)の行政処分を受けることを意味しています。

ちなみに、無免許運転や酒気帯び運転も同じ罰則です。

 

あおり運転の罪で逮捕されたら?

あおり運転の罪で検挙されると逮捕される可能性が十分にあります

前述のとおり、道路交通法が改正されあおり運転の罪が設けられたばかりですから、警察も検挙に力を入れているでしょうし、厳しい対応を取られるでしょう

 

逮捕後の流れを簡単にご説明しますと、まず、警察官とともに留置場へ向かいます。

そして、警察署で、逮捕事実に関する言い分を聴く手続き(弁解録取)を受けます。

それに前後して、留置場で身体検査、所持品検査のチェックを受けた上で、留置場に収容されます。

その後、釈放されない場合は逮捕から48時間以内に検察庁へ護送され(ニュースなどでよく見る場面です)、検察官からも同じように弁解録取を受けます。

検察官が、身柄拘束が必要と判断した場合は、検察官が身柄を受け取ったときから24時間以内に勾留請求という手続きを取られます。

勾留請求の手続きを取られた後は、その日か、その翌日に、裁判所まで護送され、裁判官の勾留質問という手続きを受けます。

その上で、裁判官が検察官の勾留請求を許可した場合は、10日間の勾留が決定します。

 

その後は、起訴か不起訴かの刑事処分が待っています。

起訴された場合は、略式起訴され「罰金20万円~40万円」程度が相場でしょう。

 

もっとも、これは前科がなく初犯の場合の話です。

今回の「ひょっこり男」さんは、報道によれば、今年2月にも道路交通法違反などの罪で有罪判決を受けていたそうです。

判決の内容は不明ですが、仮に、執行猶予付きの懲役刑の受けていた場合、今回は正式起訴され、裁判では「懲役刑」を求刑され、実刑となる可能性が高いです。

 

まとめ

あおり運転の罪は自転車にも適用される可能性があります。自転車は、車などと同様、乗り方を間違えれば「走る凶器」となる危険な乗り物です。また、車などと同様に、交通ルールを守ることも求められています。この機会に、自転車の交通ルールを再確認して、安全運転に心がけましょう。

 

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