【元検察官が解説】暴行罪とは?成立要件、逮捕されやすいケースなど解説

人から暴力を受けた、暴力を振るったという場合に該当する可能性のある罪が暴行罪です。法律では「暴力」ではなく「暴行」と表現されています。

今回は、暴行罪とはどんな罪なのか詳しく解説したいと思います。

この記事を読んでわかること

  • 暴行罪とは何かがわかる
  • 暴行罪がどんな場合に成立するのかがわかる
  • 暴行罪と傷害罪の違いがわかる
  • 暴行罪で逮捕されやすいケースがわかる
  • 暴行罪の量刑を決める基準がわかる
  • 暴行罪で逮捕回避、不起訴を獲得するためにやるべきことがわかる

 



暴行罪とは

暴行罪は刑法208条に規定されていますので、まずはその規定から確認しましょう。

 

(暴行)

第二百八条

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

 

後ほど詳しく解説しますが、以上の規定から暴行罪は次の条件を満たした場合に成立する罪ということがわかります。

  • 暴行
  • 人を傷害するに至らなかった

 

罰則は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」とされていますが、実務で拘留、科料(※)を科されることはほとんどありません。

 

※拘留、科料

いずれも懲役、罰金などと同様、刑罰の一種。拘留は1日以上30日未満の間、刑務所などに拘束される刑罰。科料は1万円未満(通常9,000円)のお金を国に納付しなければならない刑罰。

 

暴行罪の成立要件

前述のとおり、暴行罪の成立要件は

  • 暴行
  • 人を傷害するに至らなかった 

 

です。

以下で詳しく解説します。

暴行

暴行とは人の身体に対する不法な有形力の行使をいいます。

たとえば、次のような人の身体に直接触れるような行為が暴行の典型例です。

  • 殴る
  • 蹴る
  • 叩く
  • 押し倒す
  • 羽交い絞めにする
  • 腕をつかむ
  • 腕を引っ張る
  • 頭を揺らす
  • 物を人の身体に投げつける    

 

また、以下のような人の身体に直接触れない行為も暴行にあたります。

  • 着衣を引っ張る
  • 胸ぐらをつかむ
  • 髪の毛を引っ張る
  • 人に向けて物を投げる(命中しない)

 

傷害するに至らなかった

人に対する暴行の結果、怪我させなかった、健康状態を不良にさせなかったということです。

一方で、暴行の結果、怪我をさせた、健康状態を不良にした、という場合は暴行罪ではなく傷害罪に問われます。

 

(傷害)

第二百四条

人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

暴行によって傷害を発生させなかった場合はもちろん、発生させた場合でも、暴行と因果関係のない傷害である場合も暴行罪です。

顔面を殴った被害者の歯が抜けていたからといって、暴行前から抜けていた場合は傷害罪ではなく暴行罪です。

 

暴行罪と傷害罪の違い

暴行罪と傷害罪の違いは以下のとおりです。

 

暴行罪(刑法208条) 傷害罪(刑法204条)
行為 暴行 暴行又は傷害
結果の発生 なし 傷害(怪我又は健康不良)
罰則 2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料 15年以下の懲役又は50万円以下の罰金

 

暴行罪で逮捕されやすいケース

暴行罪は比較的軽い罪ですが、ケースによっては逮捕されることもあります。

以下ではどんなケースで逮捕されやすいのかみていきましょう。

再犯のおそれが高い

逮捕しなければ被害者に対して再び暴行を加えるおそれが高いケースです。

こうしたケースでは、被疑者が被害者に働きかけて自己に有利な証言をするよう迫るなどの罪証隠滅行為が行われると判断され、逮捕につながりやすくなります。

被害者に対して再び暴行を加えるおそれが高いケースとは、具体的には以下のようなケースをあげることができます。

  • 被害者と同居している
  • 被害者の居場所を知っている
  • 被疑者が暴力的な性格の持ち主
  • 被疑者に暴行、傷害などの粗暴歴がある など

 

量刑が重たくなる可能性が高い

量刑とは刑罰の重さのことです。

罰金よりも懲役が、執行猶予よりも実刑の方が、量刑が重たいということになります。

また、同じ罰金でも罰金10万円よりも30万円の方が、同じ懲役でも6カ月より1年の方が重たいということになります。

量刑が重たくなることが想定されると、被告人が刑罰をおそれて逃亡するおそれが高いと判断され、逮捕につながりやすくなります

関連記事:【元検察官が解説】逮捕後の流れ、逮捕から裁判までに釈放されるタイミング

暴行罪と量刑

暴行罪の量刑を決めるのは裁判官です。

裁判官は様々な要素(情状)を総合的に考慮して量刑を決めます。

被告人にとってマイナスの要素があれば量刑は重たくなり、反対にプラスの要素があれば量刑は軽くなる可能性があります。

暴行罪において考慮される要素と量刑の関係について以下にまとめましたので参考にしてください。

 

 

考慮される要素(情状) 量刑が重たくなる 量刑が軽くなる
暴行の計画性 あり なし(偶発的犯行)
暴行の態様 悪質 軽微
反省・謝罪の有無 なし あり(自白)
示談 なし あり
前科 あり なし
執行猶予 あり なし
再犯のおそれ あり なし

 

以上から、すべての要素でマイナスの評価だと起訴され、懲役・実刑となる可能性が高いです。

一方で、すべての要素でプラスの評価だとそもそも起訴されない、すなわち不起訴(起訴猶予)となる可能性も考えられます。

 

暴行罪で逮捕回避、不起訴なら示談

罪を認める場合逮捕回避、不起訴獲得を目指すなら、一刻も早く被害者と示談しましょう

示談が成立すれば逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれがないと判断されやすく逮捕回避につながります。

また、示談成立は、量刑のみならず刑事処分においても有利な情状として考慮されるため、不起訴につながりやすくなります。

ただ、示談交渉は弁護士に任せましょう

暴行罪の加害者との示談交渉に応じる被害者は少ないでしょうし、仮に、示談交渉を始めることができた場合でも、話し合いがうまく進まない可能性があります。

また、被害者と面識がなく、そもそも被害者の氏名、連絡先などの個人情報を知らない場合は示談交渉を進めることができません。

被害者の個人情報を把握しているのは捜査機関(警察、検察)ですが、加害者が問い合わせても教えてくれません。

一方で、弁護士であれば教えてもよいという被害者も多く、示談交渉が可能となるのです。

 



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