勾留理由開示請求とは?手続きや目的などについてわかりやすく解説

先日(令和2年6月9日)、京都地方裁判所で、殺人罪、現住建造物等放火罪などの罪に問われている青葉真司容疑者に対する勾留理由開示の手続が行われました。そこで、今回は、

 

勾留

勾留理由開示の手続

 

に関して法律ライターが解説します。

 

勾留とは

勾留とは逮捕に引き続く比較的長期間の身柄拘束のことをいいます。ちなみに、呼び方は同じ「拘留」とは意味が全く異なります。拘留は死刑、懲役、禁錮、罰金などと同じ刑罰の一種であるのに対し、勾留は刑罰ではありません。

 

「逮捕に引き続く」と述べたように、まず逮捕が先行し、その後、勾留の理由と必要性がある判断された場合に勾留されます。

 

では、誰が勾留の理由と必要性を判断するのかといえば、それは裁判官です。裁判官は検察官の勾留請求(ととも事件記録の提出)を受けて、勾留に理由があるかどうか、勾留の必要性があるかどうかを見極め、理由と必要性があると判断した場合に勾留決定を出し、勾留状を発布するのです。被疑者(マスコミは「容疑者」といいます)はこの勾留状に基づいて勾留されます。勾留場所は警察の留置施設(留置場)であることが多いでしょう。

 

勾留の期間ははじめ10日間で、その後最大10日まで延長されることがあります。また、余罪がある場合は、その罪で逮捕(再逮捕)され、また勾留される場合があります。そうすると余罪が多ければ多いほど、こうした事態を繰り返され身柄拘束期間がさらに伸びる可能性もあります。さらに、勾留されたまま起訴されると自動的に2か月間の勾留が決まり、理由がある場合には1か月ごとに期間が更新されます。

 

勾留理由開示の手続とは?

勾留理由開示とは

勾留理由開示とは、裁判官が公開の法廷で勾留の理由を明らかにするための手続です。

 

「1」でも触れましたが、被疑者を勾留するには「勾留の理由」という要件が必要であることはお分かりいただけると思います。勾留の理由とは

 

①罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由

 

があることに加え、

 

②住居不定であること

③罪証隠滅のおそれがあること

④逃亡のおそれがあること

 

のいずれかにあたることをいいます。

 

②は刑事訴訟法60条1項1号に、③は同項2号に、④は同項3号に規定されていますから、たとえば①+②+③を理由として勾留された場合には、勾留状の裏に

 

「刑事訴訟法60条1項各号に定める事由

 

 下記の 2、3 号にあたる。

 

1 被疑者が定まった住居を有しない。

 

2 被疑者が罪証隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある。

 

3 被疑者が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある。 」

 

とのみ記載されています。

 

しかし、これだけでは、裁判官がなぜ「被疑者が罪証隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある。」(2号にあたる)と判断したのか、なぜ「被疑者が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある。」と判断したのかまでは分かりません。

そこで、裁判官が勾留理由を判断するに至った経緯等を公判廷で明らかにする手続が勾留理由開示の手続というわけです。

なんのための勾留理由開示?

もっとも、実際の勾留理由開示の手続では、裁判官から「関係証拠によれば、被疑者に罪証隠滅、逃亡のおそれが認められる。」などと言った抽象的な説明のみで終わる、というケースも少なくありません。本来、勾留理由開示の手続は勾留の裁判に対する準抗告や勾留取消し請求のため(つまり、勾留段階の釈放のため)に行われるべきものですが、上記のように実際の勾留理由開示の手続は半ば形骸化しているため、本来の目的とは別の目的で活用する弁護士の先生もいます。では、そうした弁護士の先生方は、いったい何のために勾留理由開示を請求しているのでしょうか?

① 被疑者の主張、言い分を公判調書に残すため

被疑者は勾留理由開示の手続で意見を述べることができます。そして、手続(公判廷)で述べたことは公判調書という裁判所書記官が作成する書面に記録されます。そして、そこに記録された内容は、後で起訴され刑事裁判となった場合に被告人側に有利な証拠として使うことができるのです。そのため、弁護人は、勾留理由開示の手続が行われる早い段階から(勾留理由開示の手続は、検察官の勾留請求の日から5日以内に行われます)、被疑者の主張や言い分を裁判官の面前で明らかにしてしまおうというわけです。

② 家族や友人に会わせるため、姿を見せるため

これは特に被疑者に接見禁止決定が出されている場合に活用されます。被疑者に接見禁止決定が出されている場合、弁護士以外の人は被疑者と面会(接見)することができません。しかし、勾留理由開示の手続は公判廷で行われますから、家族や友人は傍聴席で手続を傍聴することができます。また、家族が勾留理由開示を請求すれば、その家族自身が傍聴席ではなく証言台に立って被疑者のために意見を述べることができるのです。つまり、被疑者に接見禁止決定が出ている場合でも、勾留理由開示の手続では自然と家族や友人らと会ったり、姿を見せることが可能となるのです。

③ パフォーマンス?マスコミへのアピールのため?

勾留理由開示の手続は公判廷で行われますから、誰でもその手続を傍聴席で傍聴することができます(手続が行われる日時を事前につかんでおく必要はありますが・・・)。そして、社会的耳目を集める事件であればあるほど、傍聴席に多くのマスコミ関係者が座り、被疑者、弁護人がどんなことを言うのか聞き耳を立てているわけです。そのため、弁護人はそうした状況を逆手にとって、勾留理由開示の手続をパフォーマンス、世間へのアピールの場に使っているのではないかと指摘する専門家の方もいます。

確かに、起訴される前までは、被疑者側の主張や言い分等がなかなか報道されない現状にあります。そこで、弁護人は勾留理由開示の手続を利用して、被疑者や弁護人の主張・言い分、現状を広く世間に知らしめようとしているのではないかというのです。

実際に、前日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏は勾留理由開示の手続で、自身の主張、言い分を述べ、マスコミを通じて自身の主張、言い分を世間に知らしめました。また、今回の青葉真司容疑者は手続で何も述べなかったとのことですが、ストレッチャーに載せられて公判廷に出廷した姿を世間に知らしめることで、勾留の理由がないことを世間にアピールしたかったのではないかとも考えてしまいます。

以上

 

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