非行歴とは?補導歴・前科との違い、就職への影響についても解説

非行歴、補導歴という言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、それぞれの意味を正しく理解されている方は少ないと思います。
本記事では、非行歴と補導歴の違い、非行歴と前科の違い、非行歴を有することによる就職への影響について元検察官の私が詳しく解説します。
非行歴とは
非行歴とは、非行少年の「非行事実」、「検挙(逮捕)日」、「顛末(処分)」に関する履歴のことです。
非行少年とは、将来的に少年審判を受ける可能性のある少年のことで、少年法(以下、法といいます)3条では次の3種類の少年(20歳未満の者)を非行少年としています。
【非行少年(=将来的に少年審判を受ける可能性のある少年)】
- 犯罪少年(法3条1項1号)
→罪を犯した少年
- 触法少年(同項2号)
→14歳未満の刑事法令に触れる行為をした少年
- ぐ犯少年(同項3号)
→次に掲げる事由があって、少年の性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞(おそれ)のある少年
・保護者の正当な監督に服しない性癖のあること
・正当な理由がなく家庭に寄り附かないこと
・犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入りすること
・自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること
非行少年の中でも犯罪少年は、「警察による検挙(逮捕)→送致(送検)→警察・検察の捜査(取調べなど)→家庭裁判所送致→家庭裁判所調査官らによる調査→少年審判」という流れを経ます。
そして、少年審判では審理を経て、最終的に
【少年審判で受ける可能性のある保護処分】
- 保護観察
- 児童自立支援施設・児童養護施設送致
- 少年院送致
のいずれかの保護処分を受けるのが基本です(保護処分まで必要ないと判断された場合は「不処分」決定を受けます)。
非行歴はこうした検挙から保護処分までが分かる履歴のようなものといえます。
非行歴の情報は警察で管理され、検察、裁判所以外の外部に漏れることはありません。
非行歴と補導歴の違い
非行歴は非行少年に関する履歴でしたが、補導歴は非行少年以外に関する履歴です。
すなわち、不良行為少年と呼ばれる少年に対して行った補導の履歴のことを補導歴といいます。
したがって、非行歴と補導歴の違いは、非行少年と不良行為少年の違いといっても過言ではありません。
ちなみに、不良行為少年とは、非行少年以外の不良行為をしている少年のことをいうとされています(少年警察活動規則第2条6号)。
【不良行為の種類】
・飲酒
・喫煙
・深夜はいかい
・薬物乱用
・粗暴行為(放置すれば暴行、脅迫、器物損壊等に発展するおそれのある粗暴な行為)
・刃物等所持
・金品不正要求
・金品持ち出し(保護者等の金品を無断で持ち出す行為)
・性的いたずら
・暴走行為(自動車等の運転に関し、交通の危険を生じさせ、若しくは他人に迷惑を及ぼすおそれのある行為又はこのような行為をする者と行動をともにする行為)
・家出
・無断外泊
・怠学(正当な理由がなく、学校を休み、早退するなどの行為)
・不健全性行為(少年の健全育成上支障のある性的行為)
・不良交友(犯罪性のある者その他少年の健全育成上支障のある者と交際する行為)
・不健全娯楽(少年の健全育成上支障のある娯楽に興じる行為)
・指定行為(不健全就労)
非行歴と前科との違い
前科は、刑事裁判を受け、刑罰(懲役、禁錮、罰金など)を受けた履歴のことです。
原則として、少年には刑罰は科されませんので、少年に前科はつきません。
もっとも、例外的に、少年にも前科がつく場合があります。それが、家庭裁判所の判断で、事件を家庭裁判所から検察庁へ送致される「逆送決定」を受けた場合です。
現在の少年法では、以下の3つの場合に逆送決定を出すことができると規定していますが、今後は、逆送決定の対象となる事件が拡大する見込みとなっています(詳しくは以下の参考記事をご参照ください)。
【逆送決定が出される場合】
- 家庭裁判所送致後に少年の年齢が20歳を超えること(年齢超過)が判明した場合(法19条2項)
- 犯罪少年が「死刑、懲役又は禁錮に当たる罪」を犯したときに14歳以上の場合において、調査の結果、事件の内容及び情状に照らし、その少年に保護処分よりも刑罰を科すことが相当と認められる場合(法20条1項)
- 犯罪少年が「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」を犯したときに16歳以上の場合(ただし、一定の事情が認められる場合は逆送とならない例外あり)(法20条2項)
参考:少年法の改正による厳罰化とは?逆送についても元検察官が解説
非行歴がついたことによる就職への影響は?
面接で非行歴を聞かれても答える必要はありませんし、指定された履歴書に賞罰欄が設けられていても非行歴を記載する必要はありません(前科は回答、記載する義務があります)。
もっとも、非行歴が付く過程で、たとえば退学処分などの社会的不利益を受け通常のルートから外れた経歴を歩んでしまった場合は、面接でその点について詳しく聞かれ、結果的に、非行歴を有することを会社側に言わざるを得ない、という状況となってしまうことも十分に考えられます。
就職活動の際、非行歴を有することを会社側に積極的に告知する義務はありませんが、上記のような可能性があることを承知の上で、事前に対策を取っておく必要があるでしょう。
まとめ
非行歴は非行少年に関する経歴です。就職の面接で聞かれても答える必要はありませんし、履歴書の賞罰欄に記載する必要はありません。もっとも、万が一、非行歴を有することがばれてしまった場合は、会社側の心証が悪くなり将来に悪影響を及ぼすことも考えられますから、やはり非行歴がつかないよう行動することが一番の対策だといえます。