自転車と車の交通事故の過失割合と納得いかない場合の3つの対処法

あなたは今、「自転車に乗っていて車との交通事故に遭ったが、自転車と車との交通事故の過失割合を知りたい」という思いで、この記事にたどり着かれたのではないでしょうか?
交通事故の過失割合は損害賠償金(示談金)を決める重要な要素ですから、一歩対応を間違えれば、大きな損をしてしまうことにも繋がりかねません。
本記事では
☑ 自転車と車では、基本的に自転車の過失割合が小さくなること
☑ 自転車と車の交通事故の「基本の過失割合」
☑ 自転車の過失割合が大きくなるケース
☑ 自転車と車の交通事故の過失割合の「修正要素」
☑ 交通事故の過失割合に納得がいかない場合の対処法
について詳しく解説していきたいと思います。
本記事をお読みいただくことで、自転車と車との交通事故の過失割合の基本的な知識を身に付けていただくことができますので、ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。

自転車と車との交通事故では自転車の過失割合が小さい
車も自転車も法律上は同じ「車両」ですが、交通事故の過失割合は、基本的には、自転車の方が車よりも過失割合が小さくなります。
車は自転車よりも車体が大きいですし、作りも頑丈で、スピードも格段に異なるため、一歩間違えると人の生命を一気に奪いかねない危険な乗物といえます。それゆえ、車を運転するには運転免許が必要とされていますし、運転する際は、細心の注意を払って運転することが求められています。
そのため、一度、交通事故を起こすと、車の運転者の方が「もっと注意して車を運転すべきでしたね」と言われやすくなり、車の過失割合が大きく、自転車の過失割合が小さくなるというわけです。

【ケース別】自転車と車との交通事故の「基本の過失割合」
交通事故の過失割合を決めるに当たっては、まず、基本となる過失割合を決めます。交通事故実務では、基本となる過失割合を決めるに当たっては、主に日弁連交通事故センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準」(通称、赤本)を参照します。赤本には、交通事故の類型・態様、道路状況ごとの基本の過失割合が掲載されています。
以下では、この赤本等を基に自転車と車の基本の過失割合(一部)をご紹介します。
「信号機あり」、「交差点」、「直進車同士の出会頭」
信号機の色・態様 | 自転車の過失割合 | 車の過失割合 |
自転車「青」進入、車「赤」進入 | 0 | 100 |
①自転車「赤」進入、車「青」進入 | 80 | 20 |
自転車「黄」進入、車「赤」進入 | 10 | 90 |
②自転車「赤」進入、車「赤」進入 | 60 | 40 |
③自転車「赤」進入、車「赤」進入 | 30 | 70 |
「信号機なし」、「交差点」、「直進車同士の出会頭」
道路状況・態様 | 自転車の過失割合 | 車の過失割合 | |
道幅が同じ交差点 | 20 | 80 | |
一方が明らかに広い道路 | 自転車が広い | 10 | 90 |
自転車が狭い | 30 | 70 | |
一方が優先道路
|
自転車が優先 | 10 | 90 |
④自転車が非優先 | 50 | 50 | |
一方に一時停止の標識あり(一時停止違反) | 車にあり | 10 | 90 |
⑤自転車にあり | 40 | 60 | |
一方通行違反 | 車が違反 | 10 | 90 |
⑥自転車が違反 | 50 | 50 |
「信号機あり」、「交差点」、「自転車直進、車右折」
信号機の色・態様 | 自転車の過失割合 | 車の過失割合 |
自転車「青」進入、車「赤」進入 | 10 | 90 |
自転車「黄」進入、車「青」進入「黄」右折 | 40 | 60 |
自転車「黄」進入、車「黄」進入 | 20 | 80 |
自転車「赤」進入、車「赤」進入 | 30 | 70 |
⑦自転車「赤」進入、車「黄」進入「赤」右折 | 50 | 50 |
⑧自転車「赤」進入、車「青」進入「赤」右折 | 70 | 30 |
⑨自転車「赤」進入、車「右折青矢印」 | 80 | 20 |
「信号機あり」、「交差点」、「自転車右折、車直進」
信号機の色・態様 | 自転車の過失割合 | 車の過失割合 |
⑩転車「青」進入、車「青」進入 | 50 | 50 |
自転車「青」進入「黄色」右折、車「黄色」進入 | 20 | 80 |
⑪転車「黄」進入、車「黄」進入 | 40 | 60 |
自転車「赤」進入、車「赤」進入 | 30 | 70 |
「信号機なし」、「交差点」、「一方が直進、他方が右折」
交通事故態様 | 自転車の過失割合 | 車の過失割合 |
自転車直進、車右折 | 10 | 90 |
⑫自転車右折、車直進 | 50 | 50 |
「信号機あり」、「交差点」、「自転車横断歩道進行、車直進」
信号機の色 | 自転車の過失割合 | 車の過失割合 |
自転車「青」横断、車「赤」進入 | 0 | 100 |
自転車「青点滅」横断、車「赤」進入 | 10 | 90 |
自転車「赤」横断、車「赤」横断 | 25 | 75 |
⑬自転車「赤」横断、車「黄」進入 | 55 | 45 |
⑭自転車「赤」横断、車「青」進入 | 75 | 25 |
「信号機あり」、「交差点」、「自転車横断歩道進行、車右左折」
信号機の色 | 自転車の過失割合 | 車の過失割合 |
自転車「青」横断、車「青」で右左折 | 10 | 90 |
⑮自転車「赤」横断、車「青」進入 | 60 | 40 |
以上の表からも、自転車の過失割合が車の過失割合を上回るのは赤文字で表示した交通事故のみで、自転車と車との交通事故では、自転車の方が車よりも過失割合が小さくなるケースが多いことがお分かりいただけると思います。
自転車の「基本の過失割合」が大きくなるケース
前記の表をみていただいてお分かりいただけるように、自転車の基本の過失割合が大きくなるケースとしては
- 自転車が、信号機のある交差点で、対面信号機の表示が「赤」のときに交差点に進入した場合
です(車が「赤」の場合を除く)。つまり、自転車が信号無視したという場合ですね(表①、②、⑧、⑨、⑬、⑭、⑮参照)。
その他、自転車が
- 信号機のない交差点で、
・ 優先道路に進入した場合(表④参照)
・ 一時停止違反した場合(表⑤参照)
・ 一方通行違反した場合(表⑥参照)
- 交差点で、
・ 直進車の進行を妨害した場合(表⑨、⑩、⑪参照)
があります。
以上から、自転車が道路交通法に規定されている交通ルールを破った場合に、自転車の基本の過失割合が大きくなることがお分かりいただけると思います。
自転車は道路交通法上では「軽車両」と呼ばれ、車などと同様に「車両」の一部で、車両とほぼ同様の交通ルールが設けられています。
今一度、自転車の交通ルールをしっかり確認し、運転する際は車両の一部であることを自覚し、交通ルールを守って運転することが必要です。

自転車と車との交通事故における「修正要素」
赤本等で「基本の過失割合」を確定できたら、次は、当該交通事故に「修正要素」がないかどうかを確認します。「修正要素」とは、交通事故の個別の事情に応じて「基本の過失割合」を修正する要素のことです。「修正要素」には、不利となるプラスの要素と有利となるマイナスの要素があり、適用される要素は交通事故の場所、状況等により異なります。要素が複数ある場合はその分加算されます。
以下では、自転車と車との交通事故における、自転車のプラスの修正要素とマイナスの修正要素についてご紹介してまいります。なお、修正要素に当てはまるからといって、必ずプラス、マイナスされるというわけではなく、事案に応じて個別に判断されます。
①夜間【0~+5】
夜間とは、日没から日の出までのことをいいます。
夜間は日中に比べ、車から自転車の存在を確認しづらいためです。
②重過失【+10~+20】
違反の程度が著しく重たいことです。
たとえば、居眠り運転、酒酔い運転、手放し運転などがこれに当たります。
③著しい過失【+5~+10】
重過失よりも違反の程度が軽いものです。
片手運転、傘さし運転、スマートフォン・携帯電話使用中の運転、イヤホンをつけた状態での運転、無灯火運転、二人の乗り運転などがこれに当たります。
④高速度進入【+5~+10】
高速度進入とは、おおむね時速20キロメートルを超過した速度で交差点に進入してきたことをいいます。
⑤児童、高齢者【-5~-10】
児童とは6歳以上13歳未満の者(主として小学生、6歳未満は「幼児」)、高齢者とは65歳以上の者をいいます。
児童や高齢者が自転車を運転している際は、車の運転者により高い注意義務が求められます。
⑥自転車横断帯横断通行【-5~-25】
自転車横断帯は、歩行者のために設けられている横断歩道と同様に自転車のための聖域といえます。
⑦車の重過失又は著しい過失【-5~-20】
車の重過失とは、たとえば、危険運転、酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、制限・指定速度を30キロメートル超過した運転、過労運転、薬物等の影響により正常な運転ができない状態での運転などです。
車の著しい過失とは、たとえば、脇見運転、スマートフォン・携帯・カーナビを操作しながらの運転、酒気帯び運転、制限・指定速度を15~30キロメートル超過した運転、著しくハンドル・ブレーキの不適格操作による運転などがあります。
交通事故の過失割合に納得がいかない場合の対処法
加害者が任意保険に加入している場合は、保険会社の担当者から物損、人損の示談交渉をもちかけられた際に過失割合を提示されます(はっきりと言われないこと場合もあります)が、納得がいかない場合は示談を保留し、以下の対応を取られてみてはいかがでしょうか?
日弁連交通事故相談センターの「電話・面談相談」に申し込む
日弁連交通事故相談センターは、日本弁護士連合会により設立された交通事故専門の相談センターです。
センターでは、無料法律相談(1回30分程度、1事案につき5回まで)や示談のあっ旋(センターの弁護士が被害者と加害者の間に入って示談を促す手続き)などを受け付けています。センターは各都道府県に必ず一つは設けられています。以下から、お近くのセンターを探してみてはいかがでしょうか?
日弁連交通事故センターホームページ【https://n-tacc.or.jp/】
日弁連交通事故センター所在地【https://n-tacc.or.jp/list】
弁護士費用特約を使って弁護士に相談、依頼する
弁護士費用特約とは、弁護士に保険会社との示談交渉などの弁護活動を依頼する際に発生する弁護士費用を保険でカバーしてくれる保険の特約のことです。つまり、弁護士費用を実質「無料」で弁護士に相談、依頼できるのがこの弁護士費用を特約というわけです。
ご自身が加入している自動車保険、傷害保険、火災保険、自転車保険などに弁護士費用特約を付けている場合は、この弁護士費用特約を使える可能性があります。まずは、保険会社に問い合わせるなどして確認してみましょう。
弁護士費用特約を使わずに弁護士に相談、依頼する
ご自身で加入している保険に弁護士費用特約を付けていない場合は、弁護士費用を自己負担して弁護士に相談、依頼することを検討しなければなりません。
もっとも、相談のみであれば、無料の法律相談を提供している法律事務所をいくつかあたってみて、弁護士の意見を聞いてみるのも一つの方法です。
また、法テラスを利用する手もあります。法テラスでも無料法律相談(1回30分程度、1事案につき3回まで)を受けることができます。また、比較的安価な弁護士費用を立て替えてくれますし、事件終了後は、月5,000円~10,000円前後での分割返済を認めてくれます。もっとも、利用にあたっては一定の資力以下でなければならないなど条件をクリアする必要があります。法テラスと提携している法律事務所であれば、法律事務所を通じて法テラスを利用することができますので、相談時に一度、問い合わせてみましょう。
法テラスホームページ【https://www.houterasu.or.jp/】
法テラス所在地【https://www.houterasu.or.jp/chihoujimusho/index.html】
まとめ
自転車と車との交通事故の場合、過失割合については自転車に有利に働きます。もっとも、信号無視などの重大な法令違反がある場合には自転車の過失割合が大きくなることもあります。相手方から提示された過失割合に納得がいかない場合には、その場で合意せず、早めに弁護士などに相談しましょう。