送検された後に釈放された理由は?書類送検、身柄送検についても解説

ひき逃げなどの罪に問われた伊藤健太郎さんが送検された後に釈放されました。


このニュースを見て「送検って何?」「なぜ釈放されるの?」と思われた方も多いのではないでしょうか?

そこで、本記事では、送検、書類送検、身柄送検の意味伊藤さんが釈放された理由などについて解説します。

 

そもそも送検って?

送検とは、警察官が取調べなどで集めた証拠書類、証拠物を検察官(検察庁)へ送致することをいいます。

送検は法律用語ではなく、送致の「送」と検察官の「検」の頭文字を取って造った造語にすぎません。

 




書類送検とは?

書類送検とは、在宅事件の送検を意味する言葉です。

書類送検も法律用語ではありません。

 

刑事訴訟法246条は、警察官(規定上は「司法警察員」とされています)は、在宅事件の捜査をしたときは書類及び証拠物とともに検察官に送致しなければならないと規定しています。

 

刑事訴訟法第二百四十六条

(司法警察員から検察官への事件の送致)

司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件は、この限りではない。

 

よくニュースなどで「●●が書類送検されました」と聞いたことがある方も多いと思いますが、

この意味するところは、警察が捜査の過程で集めた、あるいは作った在宅事件の書類や証拠物を検察官へ送った、ということを意味しています。

書類送検後の流れは?

書類送検された後の流れは以下のとおりです。

 

【書類送検後の流れ】

 

① 書類送検

② 検察庁から呼び出し、取調べ

③ 起訴、不起訴

 

書類送検された後(①)は、検察庁(担当の検察官、あるいは検察事務官)から取調べのため検察庁へ出頭するよう文書、あるいは電話で呼び出しを受けます(②)。

もっとも、在宅事件の場合、下記の身柄事件と異なり時間的制約がありません。そのため、いつ書類送検されたのか、いつ検察庁から呼び出しを受けるのかは分かりません不安な方は、一度、担当の警察官や検察庁(事件係)に書類送検されたのか、呼び出しはいつ頃になりそうか尋ねてみるとよいです。

 

検察庁での取調べなどを受けた後は、起訴、不起訴の刑事処分が下されます(③)。起訴のうち正式起訴(※)された場合は、後日、裁判所から「起訴状(謄本)」などの書類がご自宅に特別送達されてきます。正式起訴された場合は、起訴状謄本を受け取ってはじめて「起訴されたのだ」ということを知るでしょう。

起訴状謄本を受け取った後、国選弁護人を選ぶまでの流れは以下の記事で解説しています。

参考:国選弁護人を選任できる条件や流れ【在宅事件】について解説

他方で、起訴のうち略式起訴(※)された場合は、後日、裁判所から「略式命令(謄本)」が特別送達されてきます。略式起訴される場合は、正式起訴される場合と異なり、検察庁での取調べ時に略式裁判(※)を受けるかどうかの同意を求められます。したがって、略式起訴されることは、あらかじめある程度予測がつくでしょう。

 

なお、在宅事件の取調べは1回で済むとは限りません。事件の性質や認否などによっては、複数回、検察庁から呼び出しを受ける可能性もあります。また、書類送検後も検察庁のみならず、警察からも呼び出しを受けることもあります。

捜査がいつ終わり、いつ刑事処分が下されるかもわかりません。教えてくれるかどうか別として、不安な方は担当の検察官に尋ねてみるとよいです。なお、検察官が不起訴処分を下した後、被疑者から請求があったときは不起訴にしたことを教えなければならないことになっています。

 

※正式起訴

正式裁判を求めるための起訴。

正式裁判は、テレビ・ドラマなどでよく見るように、裁判官、検察官、被告人・弁護人が公開の法廷に出廷して行う刑事裁判です。正式裁判では、死刑、懲役、禁錮、罰金、科料、拘留のいずれの刑罰も科すことができます。

 

※略式起訴

略式裁判を求めるための起訴。

略式裁判は、裁判官の書面審理のみで終わります。つまり、被告人が法廷へ出廷する必要はありません。刑事訴訟法では、略式裁判では、100万円以下の罰金又は科料のみ科すことができるとされています。

 

 

身柄送検とは?

身柄送検とは「身柄事件の送検」を意味する言葉です。

身柄送検も法律用語ではありません。

身柄送検後の流れは?

逮捕された事件が身柄事件となりますが、逮捕には通常逮捕、緊急逮捕、現行犯逮捕があります。

いずれの逮捕でも、まずは、警察署の留置場に収容されます

その後の手続きについては、刑事訴訟法第203条に規定されています(203条は通常逮捕に関する規定ですが、緊急逮捕、現行犯逮捕の場合もこの規定を準用しています)。

刑事訴訟法

第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え(①)、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し(②)、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない(③)。

※下線、数字は筆者が記入

 

逮捕後は、警察官から逮捕事実について言い分を聴く弁解録取の手続きを受けます(①)。その後、警察官が身柄拘束の必要がないと判断したときは釈放されます(②)。他方で、身柄拘束の必要があると判断されたときは、逮捕から48時間以内に身柄と証拠書類・証拠物が検察官へ送致されます。これが身柄送致です。

身柄送検後の流れは以下のとおりです。

 

【身柄送検後の流れ】

③ 身柄送検

④ 検察官による弁解録取→釈放(※伊藤健太郎さんのケース)→在宅事件→⑧へ

⑤ 勾留請求

⑥ 裁判官による勾留質問→釈放→在宅事件→⑧へ

⑦ 勾留(10日間+最大10日間の延長)→釈放?→在宅事件→⑧へ

⑧ 起訴、不起訴

 

身柄送検後は、検察官による弁解録取を受けます。ここで、検察官が身柄拘束が必要ないと判断した場合は釈放されます(④)。伊藤さんはこの段階で釈放されています

釈放された理由は、検察官が、伊藤さんに「逃亡のおそれ」、「罪証隠滅のおそれ」がないと判断したからです。

ひき逃げした場合は、通常、逃亡のおそれが高いと判断される傾向にありますが、伊藤さんは交通事故から約3分と比較的短時間で現場に戻っています。さらに、伊藤さんが有名俳優で、社会的に認知されている人物という点も「逃亡のおそれがない」という判断に大きく影響しているでしょう。

次に、罪証隠滅のおそれがないという点ですが、伊藤さんが起こした交通事故のような場合、交通事故直後に警察の交通事故現場やその周辺における証拠収集が行われるのが通常です。そのため、仮に、釈放しても罪証隠滅行為を働くおそれはないと考えられます。今回、釈放した検察官も同様に考えた可能性はあるでしょう。

 

参考:ひき逃げの刑罰は?交通事故を起こしたらやるべき4つの対処法

 

他方、伊藤さんがひき逃げ後も交通事故現場に戻らなかった場合は、逃亡のおそれが高いと判断されて勾留請求(⑤)されていた可能性もあります。勾留請求後は、裁判官による勾留質問を受けます(⑥)。ここで、裁判官が勾留の理由、必要性がないと判断した場合は釈放されますが、あると判断した場合は勾留が決定します(⑦)。なお、この勾留期間中に、弁護人の勾留に対する不服申立てが認められれば釈放されます。

 

勾留された場合は、勾留期間中に取調べなどの捜査を受け、起訴、不起訴の刑事処分を受けるのが基本です(⑧)。稀に、処分保留のまま釈放されることもあり、釈放後に起訴、不起訴の刑事処分が決まることもあります。

身柄事件の場合でも正式起訴、略式起訴があります。正式起訴された場合は自動的に2か月間の勾留が決定し、保釈されない限り日常生活に戻れません。他方で、略式起訴された場合は「罰金●●円」という略式命令を受けた時点で釈放されます。

 

書類送検と身柄送検で罪の重さは変わる?

書類送検は罪が軽く、身柄送検は罪が重たいといイメージをお持ちかもしれませんが、実は、書類送検されたからといって、刑事処分や罪が軽くなることが補償されたわけではありません

 

起訴か不起訴か、懲役か罰金か、実刑か執行猶予かは、犯行の態様、動機、結果などの犯情のほか、被疑者・被告人の年齢、境遇、被害弁償・示談の有無、被害者の処罰感情、再犯のおそれ、更生可能性などの所情状を考慮して判断されます。

 

なお、伊藤さんの今後については、先ほどの「ひき逃げの刑罰は?交通事故を起こしたらやるべき4つの対処法」でも解説していますのでよかったらご覧になってください。

 

まとめ

送検は事件の証拠書類などを検察官に送致するという意味の造語です。送検のうち書類送検は在宅事件で使用される送検です。他方で、身柄送検は身柄事件で使用される送検です。書類送検、身柄送検された後はともに、警察、検察の捜査を受けます。また、書類送検されたからといって刑事処分や罪の重さが軽くなることが補償されたわけではありません。

 

 

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